映画化することでも話題の作品。
京都の大学に通う女子大学生の気だるげな日常、
読み進めるごとにタイトルの言葉の意味が現れていきます。
幅広い年齢層に読まれてほしい一冊です。
作品情報・君は永遠にそいつらより若い・津村記久子
「ポトスライムの舟」にて、2009年第140回芥川龍之介賞を受賞した津村記久子のデビュー作。
第21回太宰治賞を受賞し、2021年秋に映画が公開予定です。
あらすじ・君は永遠にそいつらより若い・津村記久子
だるい日常、
その裏に潜む悪意
大学卒業を間近に控え、児童福祉職への就職も決まり、手持ちぶさたな日々を送るホリガイは、身長170cmを超える22歳、処女。
変わり者とされているが、さほど自覚はない。
バイトと学校と下宿を行き来するぐだぐだした日常をすごしている。
同じ大学に通う一つ年下のイノギと知り合うが、過去に痛ましい経験を持つイノギとは、独特な関係を紡いでいく。
そんな中、友人、ホミネの死以降、ホリガイを取り巻く日常の裏に潜む「暴力」と「哀しみ」が顔を見せる…。
(公式サイトより)
感想・君は永遠にそいつらより若い・津村記久子 ※ネタバレ有
京都の大学に通う女子大学生のホリガイの日常が描かれています。
京都といえば学生の街としても知られていますが、
その学生の生活のリアルなこと…。
森見登美彦の「四畳半神話大系」など、京都の大学生を描く作品は、
モラトリアムを感じて楽しい。
淡々とこんな平穏な日常が過ぎていくのかと思いきや、
一歩足を踏み入れれば、潜んでいる不条理な事柄が顔を覗かせます。
(以下ネタバレ有)
感想ですが、もう一言、
めちゃくちゃ面白いです。
主人公・ホリガイの気だるげな生活は、暇を持て余し、
なんだかグルグルと内省してしまう大学生、と言った感じがとても良い。
後半に進むにつれて、同学生の人物のもつ孤独や問題と、ホリガイの併せ持つ特質が混ざり合って、一寸先は闇、誰もが出会ってしまうかもしれない悪意が浮き彫りになっていきます。
同学生であるイノギさんとのやり取りが最高です。
イノギさんとは、同性愛的な(百合的な)展開があるんですが、それも熱い。
悲惨な事件を耳にして、
人為の及ばない圧倒的な悪意に対して抱く絶望、無力感、
それに猛然と怒ることのできるホリガイのような人間が、
この世界の唯一の希望のように思えました。
最後まで読むと「君は永遠にそいつらより若い」という言葉が「暗い希望」となって立ち上がります。
映画化、絶対に見に行きます。
(映画ヒットしてたくさんの人に原作も読んでほしい…)