史上最年少で芥川賞作家となった綿矢りさが描く女性同士の恋愛小説。
三島由紀夫や谷崎潤一郎など多くの作家が同性愛を小説にしてきましたが、
現代の第一線を行く作家がどのような同性愛を描くのか、というところにも注目です。
作品情報・生のみ生のままで・綿矢りさ
「蹴りたい背中」で2003年第130回芥川龍之介賞を受賞。
「インストール」や「勝手にふるえてろ」など映画化した作品も多数。
「生のみ生のままで」では第26回島清恋愛文学賞を受賞しています。
あらすじ・生のみ生のままで・綿矢りさ
25歳、夏。恋人と出かけたリゾートで、逢衣(あい)は彼の幼なじみと、その彼女・彩夏(さいか)に出逢う。芸能活動をしているという彩夏は、美しい顔に不遜な態度で、不躾な視線を寄越すばかりだったが、四人で行動するうちに打ち解けてゆく。
東京へ帰った後、逢衣は彩夏と急速に親しくなった。やがて恋人との間に結婚の話が出始めるが、ある日とつぜん彩夏から唇を奪われ、「最初からずっと好きだった」と告白される。彼女の肌が、吐息が、唇が、舌が、強烈な引力をもって私を誘う——。
綿矢りさ堂々の新境地! 女性同士の鮮烈なる恋愛小説。
(公式サイトより)
感想・生のみ生のままで・綿矢りさ ※ネタバレ有
大好きな彼氏もいて、結婚も目前に控えていた主人公の逢衣が、
彩夏との衝撃的な出会いによって、人生が一変していきます。
今まで恋愛対象として一切見ていなかった女性からのアプローチに戸惑いながらも、
自分自身で選択を重ねることによって成長していきます。
上下巻一気に読み終えましたが、もう別人のようです。
私は、2日間で上下巻3週しました。やはり別人みたいでした。
(以下ネタバレ有)
もう絶対読んでください…。
本当にめっちゃ面白いんで…。
主人公の逢衣は、結婚願望もあるごく普通の女性です。
どちらかというと、男性から守られたい、と願うタイプ。
そんな彼女が、美人な女性であり芸能人でもある彩夏からの告白で、
誰にも頼らない、「人間としての強さ」「生命力」のようなものを身に着けていきます。
自立して独りでも生きていく力を「愛の力」で身に着けていく様子が
女性として読んでいていも、とても心強かったです。
読み進めていくと、主人公自身が「女性は守られるもの」「結婚すべきもの」といった固定観念に縛られており、同性愛という一種の出来事(世間体を取っ払った事柄)をきっかけに、
自分自身にかけていた「呪い」から解放されていくように感じます。
(これは男性女性関係なく、性別に縛られる誰しが一度はかかる呪いでしょうか)
生(き)のままの源泉の温泉のような、
生(き)のままの強いお酒のような、
混じりけがないからこそ強く体を震わせるような、
そんな生き方がこの本に描かれているようです。
激しくぶつかり合い、傷つけ合い、愛し合う、
この恋愛小説は読者の肌をひりつかせるような熱を最後まで持ち続けていました。
下巻のおんぶするシーンが、もう最高です。泣ける。
お願いします、映画化(連ドラでもいいよ)してください…。